コロナ戦禍、まだまだ続いております。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
日本では、緊急事態宣言も一応は解除。
少し、収束の気配がしてきたかな・・・というような今ですが、
5月より始まりました、通称「無利子融資制度」。こちらも今、各地で旋風を巻き起こしている状況です。
ここでは、この「無利子融資」についてのざっくりとした内容説明を皮切りに
法人開拓の現役銀行員である私が感じる「なんでこの制度を利用しない顧客が多いのか???」という疑問を
明らかにしつつ、悩んでいる事業者に一刻も早く「いいから使え!」とお伝えするために
今回投稿していきます。
前置きはここまで。さっそく行ってみましょう!
「無利子融資」とは?
制度内容の詳細については他のサイトを参照してください。
ここでは、内容をすばやく、ざっくりと理解していただくことを目的としております。
基本的な内容
融資金額:いち事業者あたり最大3,000万円
融資形態:証貸(各県の信用保証協会の保証付融資が前提)
対象者:「セーフティネット保証4号」「5号」「危機関連保証」の認定を受けた、個人事業主または法人
融資期間:最大10年0ヶ月
据置期間:最大5年0ヶ月
金利:認定の種類によって異なる。金融機関との交渉次第。負担した利息は国が後払いで返してくれる。
無利子期間:3年間
保証料:負担なし
印紙代:負担なし
※上記の内容は基本的な内容ですが、自治体によっては無利子が割合が50%までだったり、保証料を最初に負担する必要があったり、印紙代が免除にならない場合があるので、金融機関や管轄の役場に確認してください。
内容補足
融資金額:
最大3,000万ですが、これは国が上限として決めているだけです。金融機関が審査して上限を最終的に決めますので、先に相談すること。
例えば、上限は3,000万円ですが、金融機関にからは「1,500万円までです」と言われることがあるということです。
融資形態:
証貸、つまり1年以上の長期返済融資です。信用保証協会の保証がないと受けられない融資です。信用保証教会について知らない方は金融機関に聞いてみるといいでしょう。要は、あなたがお金を返せなくなった時に代わりに金融機関へ返済する役割をもった所です。とはいえ、その後は保証協会があなたに返済を求めますので、あなたの借金が無くなるわけではないです。
対象者:
セーフティネット4号、5号、危機関連保証は、融資の制度名です。この制度を受ける権利がありますよ、と管轄地域の役場から許可を得て初めて、融資の申し込みができます。
この制度の申込みは自分で調べて提出もできますが、金融機関に手伝ってもらう方が簡単です。制度についてはネットで「○○市 セーフティ4号」とか調べるとすぐ出てきます。詳しい内容は前回の記事もどうぞ。
据置期間:
返済しないでいい期間のこと。普通、融資を受けたら、毎月返済します。ところがこの「据置」は、例えば「据置3年」とかに設定して借入すれば、借りてから3年間は返済がありません。これは資金繰りがかなり楽になるので、相当なメリットです。
金利:
無利子なのに??と思った方も多いはず。
実は一度は利子を負担するんです。その後、国が利子を返してくれる(大体、6ヶ月ごとにまとめて返ってくる)。キャッシュバック方式といいます。
利子は、毎月引き落としされます。注意して欲しいのは、「据置」していても利子だけは引き落としがあります。
金利は制度ごとに異なるんですが、大体1.6%〜1.9%以内くらい。金融機関との相談で決めます。
無利子ではありますが、借りてから4年後からは無利子ではなくなっちゃうので、そのことも考えて交渉しましょう。
制度の内容、自治体によっては、無利子部分が金利の50%までしかない場合もあるので確認してください。
無利子期間:
上述で少し触れましたが、無利子の期間は3年間です。
4年目からは金利は国から返ってきません。3年以上利用する方はここを理解しておきましょう。
保証料:
信用保証協会を通して融資を受けるときに払う手数料みたいなもの。通常、借り入れた日に一括払いです。交渉すれば分割払いすることもできます。
今回の無利子融資では、最初から負担なしのようです。
が、地区によって一度負担して、その後帰ってくるところもあるようですので確認してください。
印紙代:
いわゆる約定書(融資を受けるときに記入する契約書)に貼る印紙代が一部免除されます。
例えば3,000万円の融資なら、「金銭消費貸借契約証書」にはる印紙は20,000円ですが
これをそもそも貼らなくて良い。つまり非課税。
これも地区によって、免除されないところがあるので確認ください。
※何度も書いてますが、地区によって負担割合とかキャッシュバックのされ方などが若干違うので確認すること。
実際に融資を売りこんでみた感触
私が実際にこの無利子融資を、事業者に売りこんでみて思った感想ですが、大きく分けて3つ。
①「それいいね!」と即決して申し込む
②「借りても返さないといけないんでしょ?」と保留する
③「うちは3,000万も必要ないから」と借入を小さくする
言うまでもありませんが、①が正解です。はっきり言って②③の回答をする事業者は、
この制度のメリットを理解していない、あるいは理解しようとしていない事業者です。
メリットについては次の章で後述します。
返さないといけないんでしょ?と言う事業者
当たり前です。この返しをしてくる事業者が、いまだにいることが私には理解できないのですが
冗談でもこのセリフが出てくること自体、融資の役割を理解してないことがわかります。
このセリフを吐く事業者さん。キツい言い方ですが、担当者からは絶対にバカにされてますよ。
有利子の融資を提案するときには特にこのセリフをよく聞いたものですが
無利子でもこれを言ってくる事業者の多いこと・・・
今からでも遅くないので、少しでも多く借りられるよう金融機関に相談しましょう。
理由は後述します。
うちはそんなにいらない、と少しだけ借りる事業者
例えば3,000万円OKですよ!と金融機関から提案を受けたとして
「うちは小さい会社だから、そんなに借りてもねえ・・・。500万あれば十分」という事業者。
これも多いですが、私からすれば「なぜ・・・?」。
もちろん、利子は一度負担しなければなりませんから、借入が大きければ、毎月口座から引き落とされる利息も大きくなります。そこを極力小さくしたい、というのは分かります。
ですが、戻ってくるので大した問題ではありません。
もし、一時的に負担する金利すらキツい、というのであれば、それはそもそも資金繰りができていない。
借入が必要です。最小限に抑えてる場合じゃない。
満額借りるべき理由も後述します。
利用しようとしない事業者はここを「理解していない」!
さて、借入に対してネガティブな事業者さんに向けて、金融機関の立場からお伝えしたいと思います。
まずは上述の2パターン事業者さんへ。
返さないといけないんでしょ?という事業者さん向け
先ほども述べましたが、返すのは当然です。ですがよく考えてみてください。
コロナの影響が出て、売上が0になったらどうしますか?
従業員の首を切りますか?
店舗を閉めて凌ぎますか?
家族経営だから、給料払わなくても大丈夫?
コロナが10年続いてもですか?
これは未知のことなのでわかりません。
10年どころか、20年続くかもしれません。
ここで必ず「いや、2年はあっても10年はないわ。もうなんとなく収束感出てきてるし」
と思った人がいると思います。
そんなことがどうして分かるんでしょうか。収束感が本当に出てますか?
アメリカでは8万人死亡者が出てます。
緊急事態宣言が終わったのは、収束したからではありません。感染者はいまだにでています。
全国的に収束しはじめても、もしあなたの従業員が感染してしまって死亡したら?
あなたが死亡したら?
主要取引先で感染者が出たら?
こうなったときに、あなたは手元の資金だけで凌いでいけますか?
凌ぐといっても、いつまで続くかわかりません。
もちろん、その時にこの無利子融資制度は終わってます。
ここまで考える必要があります。それほど異例の災害なんです。
東北大震災の津波と同じ。
あのときも専門家が「想定外」と言っていたのは耳に新しいはずです。
今回のウイルス被害、想定内だと思いますか?
あなたの想定は、当たりますか?
分からないなら、あなたの会社がどんな被害を受けるかも、絶対分からないはずです。
そのときに、無利子で融資を受けられる。この手を打たないのは、危機意識がありません、と言っているようなもの。
うちはそんなにいりません、事業者さん向け
3,000万円借りることができるのに500万円で済まそうとしているあなた。
なぜ500万なんでしょうか。
多分、その500万には何の根拠もないはず。
いつも借入するときがそのくらいの金額なのか
3,000万円借りたことがないのか
その辺でしょう。
なぜそう言い切れるかと言うと、コロナの収束は誰にも分からないことだからです。
500万円で大丈夫、と言い切れる人は世の中に存在しません。
年商が1,000万の事業者さんがあったとします。
もちろん、普通なら、3,000万円の融資はあり得ません。規模に対して過大すぎます。
ですが、コロナは別です。
10年コロナの影響が続き、その間売上が0円だったとすれば、3,000万円以上お金が必要です。
重要なのは「今の状況がいつまで続くか誰にも分からない」ということです。
分からないなら、万全の準備と体力はつけておくべき。
無人島に漂流することがわかっていて、「2日で脱出できる」と断言して荷物を2日分しか準備しない人はいないでしょう。
1週間分でも1ヶ月分でも、持てる限り持っていくはずです。
なぜかここまで被害・影響が出ているのに、いまだにコロナを軽視している事業者が多い。
収束ムード、と言ってますが、完全に収束しても、すぐにはいつも通りになりません。
必ず、衛生面に敏感になった人がいます。
外食を減らす人がいます。
収束した!と報道されても、翌日からすぐに飲み会に行かない人もいます。
影響はいつまで続くか分からないんです。
東北震災もそうです。放射線の被害、まだ続いてますよね。これがいつ終わるか、あなたにわかりますか?
分からない以上、借りれるお金があるなら借りるべきでしょう。
これが利子がかかるなら、返済が始まるなら別です。
でもこの融資はかかりません。返済もありません。
ならば満額借りて、様子見すればいいんです。
①②のようなあなたはこうやって借りろ!
この制度は、据置期間が最大5年、無利子期間が3年あります。ここを活用します。
金額:上限いっぱい
据置期間:3年
借入期間:10年
この条件で借りるのがおすすめ。
上限いっぱいで、据置を3年にすると
「借りてから3年間、借りたお金を持ったまま、コロナの状況を様子見すること」ができます。
無利子ですので、3年間「満額」借りておいたらいいんです。
で、据置も3年にすれば返済なし。利息だけ一時負担すればいい。
もし、コロナの影響が出ず、経営に問題なさそうなら「借りたお金をそのまま全額返済」すればいい。
手をつけずに見守ってただけなので、「返済するお金は借りたお金そのまま」です。
もし、コロナの影響が出たなら「借りておいてよかった!!」です。
借りた分は、4年目から毎月返済で返していきましょう。
困ったときに金融機関から借入したら、あなたの業績が落ちている状態での審査となりますから、金利が高くなり、借入体金額を満額借りることができないかもしれません。
銀行員はこう売り込め!
上述のような事業者が多い以上、私の売り込み方は必然的にこのようになります。
条件
金額:満額
期間:10年
据置期間:3年
金利:金利上限いっぱい
売り込み方
①上限金額の確定
まずは売り込みたい企業の上限金額を確定させるため、信用保証教会へ金額の打診をします。金融機関から相談しましょう。事業者の了解は得なくてOK。
②制度の説明
「無利子」を売りに、制度の説明をします。
単刀直入に言うのが大事。「社長!無利子の融資が出たことをご存知ですか!」。
興味を持ってくれたら、簡単に制度の内容と条件を説明します。
もし興味を持たない、あるいは適当な理屈を言ってくるなら、上述の内容を話してメリットを理解してもらいましょう。
本当にお金持ちの事業者は、必要ないのも致し方ないので、諦めが必要な場合もあります。
③売上の推移を聴取し、どの制度になるか判断
まずは口頭で大体の売上を聞き取り、イケそうかイケそうにないかを簡単に判断。
明らかに大丈夫、もしくは際どいならすぐにちゃんとした数字を提出してもらうこと。
申請に必要です。
明らかに売上が上がっていたなら、不可ですが、今月か来月の売上ならチャンスがあります。
意図的に売上を落としてもらうことも視野に、アドバイスし、来月早々に数字を出してもらいましょう。
④数字をもらい、申請書を作成、役場へ提出。条件を決める。
申請は大体1日、遅い役場は3日くらいかかります。その間、審査は進められないので、通ることを前提に融資の条件を決めます。
私は、日付と金額以外は申込書に記載してもらい、許可が出た瞬間に印鑑証明書を依頼してます。
⑤認定書・印鑑証明書をセットに本申込書を提出
信用保証協会へ申込書を提出します。
認定書をとるまでが、事業者のスピード感に一番左右されやすい部分。
その間に他の金融機関に参入されやすいので、認定が降りたら速攻で申込書をもらいましょう。
⑥保証書が発行されたらすぐに約定
保証書が下りれば、融資はほぼ決定。稟議書を作り決裁をもらって、すぐに約定書を締結しましょう。
約定書さえ締結すれば、勝利(語弊がありますが)です。
一度書きましたが、具体的な数字を資料として出してもらうのが最も時間のかかる作業です。
事業者はのんびりしている人はとことんのんびりしてます。
税理士がのんびりしているケースもあります。
ここをいかに早くしてもらうかで、申込→保証書発行→勝利の方程式が完成するかが決まります。
今回の制度はどの金融機関が取り組んでも同じ結果がでる制度です(金利は交渉次第ですが)。
融資をモノにするのは、80%がスピード。
もう5月は終盤ですが、まだまだ声のかかっていない事業者は多いです。
スピードと交渉力をフルに発揮して、この滅多にない時機をものにしましょう!
事業者の方も、広い視野をもってこの制度を前向きに捉え、まずは理解してみることから始めましょう。
私の感覚ですが、優良な、大きな企業ほど、この制度の利用は積極的です。
それだけメリットの大きい(というよりデメリットの少ない)借入です。
それでは。